電源高調波: 電源に重畳する高調波電流が、限度値を超えないかどうかを評価する試験
電源に重畳する高調波電流が、限度値を超えないかどうかを評価する試験です。
インバータや、調光・温度制御に用いられる位相制御回路を搭載する製品の多くは、電源電流に正弦波とは異なる歪み成分(=高調波成分)を含むことが多くあります。
この高調波成分が、他の機器の誤動作や、配電網上の変圧器・進相コンデンサの過熱や焼損などの原因となることがあり、この抑制が求められています。
機器の分類
機器は、種類によって4つのクラスに分類されます。
限度値:クラスA機器
高調波次数n | IEC:最大許容 高調波電流[A] | JIS:最大許容 高調波電流[A] |
---|---|---|
3 | 2.30 | 2.30×(230/Vnom) |
5 | 1.14 | 1.14×(230/Vnom) |
7 | 0.77 | 0.77×(230/Vnom) |
9 | 0.40 | 0.40×(230/Vnom) |
11 | 0.33 | 0.33×(230/Vnom) |
13 | 0.21 | 0.21×(230/Vnom) |
15≦n≦39 | 0.15×(15/n) | 0.15×(15/n)×(230/Vnom) |
2 | 1.08 | 1.08×(230/Vnom) |
4 | 0.43 | 0.43×(230/Vnom) |
6 | 0.3 | 0.30×(230/Vnom) |
8≦n≦40 | 0.23×(8/n) | 0.23×(8/n)×(230/Vnom) |
Vnomは公称の定格電圧。たとえば 100 V や 200 V など。
一部エアコンや三相機器は限度値が異なる場合があります。
限度値:クラスB機器
クラスA機器の最大許容高調波電流の1.5倍を超えないこと。
限度値:クラスC機器(定格電力が25Wを超える照明装置)
高調波次数n | 基準周波数における入力電流のパーセンテージで表した最大許容高調波電流[%] |
---|---|
2 | 2 |
3 | 30× λ |
5 | 10 |
7 | 7 |
9 | 5 |
11≦n≦39(奇数のみ) | 3 |
λは回路力率。ただし、IEC 61000-3-2:2018/A1:2020では λ を使用せず、3次高調波の限度値は27%。
定格電力 5W 以上 25W 以下の照明機器は、クラスD機器に対する限度値を適用。
限度値:クラスD機器
高調波次数n | ワット当たりの最大許容 高調波電流[mA/W] | IEC:最大許容 高調波電流[A] | ワット当たりの最大許容 高調波電流[mA/W] | JIS:最大許容 高調波電流[A] |
---|---|---|---|---|
3 | 3.40 | 2.30 | 3.40×(230/Vnom) | 2.30×(230/Vnom) |
5 | 1.90 | 1.14 | 1.90×(230/Vnom) | 1.14×(230/Vnom) |
7 | 1.00 | 0.77 | 1.00×(230/Vnom) | 0.77×(230/Vnom) |
9 | 0.50 | 0.40 | 0.50×(230/Vnom) | 0.40×(230/Vnom) |
11 | 0.35 | 0.33 | 0.35×(230/Vnom) | 0.33×(230/Vnom) |
13 | 3.85/n | 0.21 | 3.85×(230/Vnom) | 0.21×(230/Vnom) |
15≦n≦39(奇数のみ) | 3.85/n | 0.15(15/n) | 3.85×(230/Vnom) | 0.15×(15/n)×(230/Vnom) |
測定は、各DFT(離散フーリエ変換)時間窓における1.5秒平滑化平方根の高調波電流を測定する。
観測時間
機器挙動のタイプ | 観測時間 |
---|---|
準固定型 | 再現性要求を満足するのに十分な時間 |
短時間サイクル(2.5分以下) | |
ランダム | |
継続時間(サイクル) | 機器の全プログラムサイクル、または動作時間の中で最大の総高調波ひずみを 生じるとみなされる2.5分間 |
電源高調波 IEC/EN 61000-3-2の試験構成例