半導体デバイスは微細加工の進歩、高性能・高品質の要求に最適化された製造プロセスが構築され、故障の減少と信頼性の向上から従来の信頼性試験やDPA(破壊的物理解析)だけではチップ内部の不具合要素検出は困難でした。そこで、半導体デバイスの微細な内在欠陥や不具合構造を最適な手法で観察(検出)し、ウェーハプロセスで起こりうる不具合とその影響度合いを考慮した判定基準で対象を評価する技術として、LSIプロセス診断法を開発しました。
LSIプロセス診断システムとは電気的に良品であるデバイスの内部構造を詳細に観察し、将来、故障の要因となりうる不具合要素の有無や構造のばらつき等から故障にいたる危険性や品質を推測・評価・選別を行う手法です。5つの検査項目(開封処理検査、表面検査、界層解析検査、断面SEM検査、断面TEM検査)とその検査技術、手順、仕様、それにより得られたデータを40項目の評価・診断基準に照らして診断、採点を行い、ランク付けすることによりデバイスの選別を行うためのシステムであり、取得した大量のデータを効率的に診断、管理、運用可能とするためのデータベースシステムから成り立ち、高信頼性システムのため、部品を効果的に選定することが可能です。
LSIプロセス診断システム
LSIプロセス診断の検査は5項目(開封処理検査、表面検査、界層解析検査、断面SEM検査、断面TEM検査)あります。各検査項目とも一般的な良品解析メニューですが、LSIプロセスを評価するにあたり、各検査項目での検査条件、検査ポイント等が定義されています。LSIプロセス診断の検査手順は積層構造、設計ルールの不明なデバイスについても適正に検査可能となるように、指定された解析手順で進められます。検査手順の特徴として、事前に解析に必要な予備情報を取得する断面予備調査と界層解析予備調査が盛り込まれています。これによりチップ内の回路ブロックや積層情報等を事前に取得します。多くのデバイスは多数の回路ブロックにより構成され、ブロックごとに、ゲート長、最小配線幅などが異なっていますが、通常は、設計ルール値で構成された最小構造部の回路がウェーハプロセス上のウイークポイントと考えられるので、事前に予備調査を行い回路ブロック情報を取得すれば確実に最小構造部の回路断面を検査することが可能となります。検査は少なくとも5つのサンプルを必要です。大きなボリューム検査は不可能で少量の抜き取り検査となります。また、LSIプロセス診断はチップ単体化処理後スタートとなります。
LSIプロセス診断審査手順フロー
各種仕様や手順が規定された5つの検査項目(開封処理検査、表面検査、界層解析検査、断面SEM検査、断面TEM検査)により得られたデータは40以上のLSIプロセス診断評価項目と各項目ごとに設けられた詳細な解説書による診断基準に従い診断と採点を行います。評価項目には各工程別に具体的な欠陥が記述され、検査により検出された不具合構造と照合することにより定量的な評価、採点が可能です。診断基準は、OKIエンジニアリングが過去に行ったデバイスの故障解析事例、良品解析事例等約5000件および各種文献例等から導いてます。LSIプロセス診断と信頼性試験との相互検証も行い、短期の信頼性試験や電気的特性検査では検出不可能な故障にいたる潜在的欠陥を検出し、LSIプロセス診断法の有効性が確認されています。(この評価項目の診断基準はプロセスの変遷や未知欠陥の検出等に合わせ随時検討を加えています。)
LSIプロセス診断は40項目の評価を行うため、大量の診断データが発生します。この診断データを効率的に処理し、有効に活用するために 専用のデータベースシステムを構築しています。大量のプロセス診断データをデータベースシステムに入力し、比較、解析可能な利用価値の高いデータを蓄積し、LSIプロセス診断システムの質を高めてます。 また、デバイスの構造値として重要なゲート長、各配線幅、パッシベーション膜厚等、詳細な測定値も入力され、任意の切り口で抽出、表示可能となっています。LSIプロセス診断システムのデータベース化により各メーカー、各プロセスルールの実力傾向を推定・評価する事ができます。