WLR評価: 高信頼性プロセスの確立と製品の高信頼性確保のため、WLR評価サービスを提供
製品のように複雑な集積回路の評価では、特にプロセスに起因する信頼性の問題点を絞り込むことが非常に困難なため、TEGを用いた信頼性評価が有効です。製品段階で発生する可能性がある信頼性の問題は、できるだけ早期に検出し、設計、プロセスにフィードバックすることが重要です。OKIエンジニアリングでは、高信頼性プロセスの確立と製品の高信頼性確保のため、WLR(Wafer Level Reliability)評価サービスを提供しています。
ウエハレベルで、効果的に信頼性を評価する手法です。TEGウエハのゲート酸化膜の各種パラメータ(TZDB、TDDB、ホットキャリア等)の測定サービスをご提供いたします。
特徴は、あらかじめ想定した故障メカニズムごとに製作したTEGを、専用の測定プログラムにより評価を行う点です。
下記の図は前工程で使用されるプラズマ装置の開発におけるダメージTEGウエハのゲート酸化膜の評価事例です。(1)未処理品、(2)プラズマ処理A、(3)プラズマ処理BのTZDB(Time Zero Dielectric Breakdown :瞬時絶縁破壊)、TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown :経時絶縁破壊)の評価事例をご紹介します。TZDB評価でプラズマ処理Bはゲート酸化膜へのダメージが大きいことがわかります。さらに、TDDB評価では、TZDBで差が観測されなかった未処理品とプラズマ処理Aの差異が観測されます。
ウエハご提供:株式会社フィルテック殿
TDDBはTime Dependent Dielectric Breakdown(経時的絶縁破壊)の略であることからも分かるように、絶縁耐圧以下の電圧でも、印加しつづけることによって経時的に絶縁破壊にいたる現象をいいます。主にMOSトランジスタのゲート酸化膜が対象となっています。TDDB劣化の発生メカニズムとして、Percolationモデルでは酸化膜に印加された電圧や酸化膜中の電流によって生じた酸化膜中の欠陥が経時的に増加し、欠陥間の距離が近くなることで電子の移動が活発化、酸化膜中に電流パスが発生して絶縁破壊に至ると考えられています。近年、トランジスタの微細化に伴うゲート酸化膜の薄膜化と電界強度の増加のためTDDBは半導体における重要な不具合要因の一つとなっています。このように、ある電界を印加したとき、酸化膜が破壊に至るまでの時間をTDDB寿命といい、絶縁破壊の時間依存性をはかる尺度と考えられています。TDDB寿命測定には定電圧ストレス法と定電流ストレス法があります。
当社では、これまでに、ウエハの面内分布を見る目的で、TDDB測定を取り入れウエハの評価を実施しています。また、ゲート酸化膜の寿命測定としては、たとえば下記のようなTDDB測定を実施することで求められます。
各条件でのTDDB測定結果をワイブルプロットし、平均寿命を計算します。 その結果を元に活性化エネルギーを算出し、実使用での寿命を算出することができます。
TDDB測定データのワイブル表記
評価用TEGウエハを用いて、MOSFETの基本特性を取得し、低温環境におけるホットキャリア評価、高温環境におけるNBTI評価を実施しました。
3.3V-PMOS/NMOSに対して基本特性を取得しました。
ホットキャリアによる素子劣化は、チャネルのキャリア(電子または正孔)が、高電界領域で電界加速により大きなエネルギーを得ることで引き起こされる現象です。大きなエネルギーを得た電子は、電位障壁を乗り越えゲート酸化膜中に注入され、トラップされます。その結果、MOSFET のしきい値電圧(Vth)および伝達コンダクタンス(gm)などの特性が劣化します。ホットキャリア劣化を加速する要因には電源電圧、チャネル長、保護膜中の水素、温度などがあります。
評価TEG用のNMOSトランジスタを-40℃環境にて、Vgs=1.6V、Vds=4.4V印加による評価を7000秒まで実施しました。その結果、10%劣化時間は77800秒となりました。
NBTIとは、トランジスタのゲート電極に対して基板の電位が負の状態でチップの温度が高まるとp型トランジスタのしきい値電圧の絶対値が次第に大きくなっていく現象です。ゲート・ボディ間にバイアスが印加されると、エネルギーの高いホットホールが発生し、そのホールがゲート酸化膜に注入され、素子の劣化を引き起こします。
評価TEG用のPMOSトランジスタを125℃環境にて、Vds=-4.4V印加による評価を7000秒まで実施しました。その結果、10%劣化時間は3030秒となりました。
NBTIでは、Ionモニターの時に、ゲートに印加していたストレス電圧をoffし、代わりに測定用電圧を印加しますが、その際、ダイナミックリカバリによりIon劣化が小さく見えることがあります。このため、Ion測定をストレス電圧offから0.1msec後に行い、ダイナミックリカバリの影響を回避しています。