記事タイトル:魔改造の夜 Bチーム テクニカルサポート参戦記 ~裏方の裏方に徹した 1.5ヶ月~
NHKの人気番組「魔改造の夜」。今回OKIグループからは、各拠点・部門を横断して集まったスペシャルチームが、「第1夜(Aチーム)ゴリラをターザンのように遠くに跳ばせ!」「第2夜(Bチーム)シャボン玉をなるべく長くつくれ!」という難題に挑戦しました。実はその裏方の一員として、OKIエンジニアリング 信頼性ソリューション事業部・MさんがBチームのテクニカルサポーターとして参加していました。本稿では、Mさん自らの視点で1.5か月間の裏方奮闘記をご紹介します。
私のお気に入りのNHK番組は、『プロジェクトX、解体キングダム、魔改造の夜』の3つです。そのお気に入り番組の1つ『魔改造の夜』への参戦募集が、OKIグループの社内イントラ掲示板に掲載されているのを目にし、心が躍りました。所属部の上司・役席に参加したい旨を相談したところ快諾、同事業部内のYさん(私とは役割は別で、プロジェクトチームのファシリティ・ロジチームへ)にも一緒に参加しようと声をかけ、2人でエントリーすることに。職場の同僚の方がたにも背中を押してもらっての挑戦となり、本当にありがたかったです。

OKI高崎事業所4期棟9F体育館(特設会場)
この体育館は、A/Bチームで2分割し魔改造の試技に向けた設計、製作、試走等を実施する特設会場です。
この特設会場は、番組の性格上ネタバレ厳禁の為、本プロジェクトに関わるメンバーのみ入室可能で、番組放送終了まで一切の事柄の他言無用(相当なプレッシャーが掛かりました)が共通運用ルールとして徹底されました。
私は、これまで電子デバイスの検査・評価・品質管理など多様な経験を積み重ねてきました。現在は地球観測衛星に搭載される撮像センサ(CCD)のスクリーニング、信頼性評価を担当しています。宇宙・航空用途のデバイスは、全ての品質(コスト、納期、対応等)に対して高付加価値、高信頼性が最優先されます。それに対して対象のデバイスは、宇宙・航空用として開発されていないデバイスでしたので、共同開発的な技術/品質要求が事あるごとに発生し、その都度解析/工程改善等現場対応してきました。スクリーニング・信頼性評価とは、私の担当業務であれば、この撮像センサが宇宙環境や長期間運用に耐えるかどうかを、厳しい基準で選抜・検証する試験で、使用環境におけるストレスを模して、温度・振動・放射線にさらし、基準を満たすかを一点一点チェックするものです。とは言え想定するストレスが過剰や過少でもいけません。工程が始まりますと何らかの形での履歴、データを残す事は当然で、その根拠、有効性までも担保を求められます。
私は、子供の頃から、カメラ等光学系機材いじりが趣味で、今も撮像センサと向き合う毎日は、好きなものづくりの延長線。約7年間、センサー評価の現場に携われていることに感謝しています。
スクリーニング・信頼性評価にご興味のある方は、ぜひ下記サービスページもご覧ください。

光学系の計測はクリーンブース内で行います。
いよいよ本プロジェクトに関わるメンバーの初顔合わせ。決起会は高崎地区某所で開催されました。そこで、メンバーの中で、自身が最年長(1960年製!)であることが判明。乾杯の挨拶を仰せつかったものの、「勝鬨」を上げて盛り上がる中で肝心の乾杯そのものを忘れる…という失態も、今となっては良い思い出です。

決起会の様子
(左:M.Nさん、中央:自身、右:鬼軍曹 ※1)
実作業では、ロボコンやプログラミングなどハイレベルなチャレンジは若手メンバーに任せ、自身は「記録係」の裏方に徹しました。自称・現役映像クリエーターとして画像/動画による記録、エピソードの記憶化にフル活用。テレビには映りませんでしたが、裏方として若い世代を支えることもまた重要な役割だと実感。最年長としてみっともない姿を見せるわけにもいかず、“縁の下の力持ち”に徹しました。
プロジェクトには、OKIグループの多様な技術・ノウハウが集まり、精密制御技術・耐久性設計・ユーザー発想力・高速試作など、全社をあげて挑む体制が作り上げられました。
「ゴリラちゃんターザン」(ゴリラちゃんをターザンの様に遠くに飛ばせ)では、中心技術として「物を精密に掴み、タイミングよく離す」自動制御。ATM事業のメカ・センサー技術、「i+活動※2」で培った遊び心・創造力が活きています。開発期間はわずか1.5ヶ月。最初の壁は「ゴリラちゃんにロープをどう掴ませるか?」という課題。メンバーからは7案が次々に出て、深夜まで議論。設計・制御開発では部品調達・加工にも苦労が続き、最終案のローラー式“掴み機構”が仕上がったのは残り2週間。自動制御での「最適タイミングで離す」技術が記録伸長の決め手となりました。バックアップ案も同時並行で進めるなど、チームで危機管理力を発揮しました。
一方、「ロープシャボン玉伸ばし走」(見たこともない巨大シャボン玉をつくれ)はATM・プリンターの精密制御技術、筐体加工技術を活かした魔改造を実施し、中でもシャボン玉液にはプリンターのトナー製作で培った化学技術を応用、増粘性向上に地場産のこんにゃく粉を採用するなど地域の特性を活かした魔改造まで採用されました。OKIグループ全体の従業員約14,000人の注目を浴びる中、「絶対に負けられない」「会社の看板を背負う」覚悟とプレッシャーも…しかし番組自体は、“失敗が許される環境”であり、だからこそ、全員が失敗を恐れず思い切り企画にチャレンジすることができました。幾度も壁にぶつかりながら、最後まで諦めず挑み続けた忘れがたい日々でした。結果は、「ゴリラちゃんターザン」、「ロープシャボン玉伸ばし走」共に優勝を成し遂げております。技術者冥利に尽きますし、私のカメラ技術が「記録係」として役に立つ瞬間、本当にやりがいを感じます。
詳しくは、特設サイトでご覧いただけます。ぜひご覧ください。
記録係の仕事は、プロジェクトメンバーが普段の業務とは違う思いの中で、もがき苦しむ様子、熱い瞬間を冷徹な目線で映像・画像に残すこと。
本記事では、そのチームの様子、熱い瞬間を残念ながらすべてお見せすることができませんが、本プロジェクトが開始したころの景色から、一部を皆様にもお見せできればと思います。
ちなみに、私の趣味は、カメラ撮影です。ここからは少し自画自賛、蛇足かもしれませんが、エピソードを紹介させてください。OKIエンジニアリングは2023年、創立50周年を迎えました。祝賀パーティーが開催されることになり、頼まれもしないのに「記念の集合写真を撮らせてほしい」と自ら立候補しました。幸いにも、約130名が収まる画角のレンズや、撮影用の脚立を使用したことで、会場全体を使った俯瞰に恵まれ作品?は好評でした。個人的には、「会場に前乗りし下見」「機材の調達」「会場スタッフとのコミュニケーションを密に取る」が功を奏した(場数を踏んでいないとできない芸当)と考えています。これらは、やはり経験を重ねていなければできないことだと思っています。
このように画像記録や本業の電気電子関連業務等についても、自分の事として如何にこなすかがポイントと考え、日々実践しています。

冬すがたの赤城山(赤城おろしが身にしみます)

春めき始めた赤城山

「限界突破」「勝ちにこだわる」のスローガンのもと活動した成果です!
「限界突破(Limit Break)」のスローガンを掲げて、ダブル優勝を記念したクリアファイルを作成。クリアファイルには、デザインチームによるプロジェクトへの魂が込められています。


W優勝記念 クリアファイル
相変わらず若いつもりでいますが、確実に世間は変化していると思われます。振り返りますと自分の周りには常に物、仕事を教えてくれる人に恵まれ続けていました。
親父に始まり、実家の裏には自動車技師、先生、町の写真屋、自転車屋、従妹、同僚、先輩...皆モノづくりに従事していた人です。お仕着せ?の学校での勉強は自分でも「できないなぁー」と自覚症状があるほどですが、その他広範囲にわたる現場での作業、モノづくりは物心付いた時には自分の手を汚し実践してきました。50年以上も前からひたすら現場主義でしたので、最先端といわれる半導体においても「ひとの作った物なので諦めず、じっくり見ていれば何とかなる」の父の教え?を守り現在に至ります。
「魔改造」のメンバーが皆若い人だらけでびっくり、さらにプロジェクトが動き始めると自分が実践して来たことがいかに幼稚かが判りましたが、「魔改造」と巡り合った瞬間「自分のライフワークそのもの」を感じたことも事実です。OKI(日本)のモノづくりもまだまだ大丈夫、太鼓判!今回の「魔改造の結果」が如実に物語ります。「魔改造の夜」での挑戦を通じて、ものづくりの楽しさ、そして“高い目標に向かって全員が自律的に動くこと”の大切さを改めて体感しました。日々の業務外で自分たちの技術と情熱が新しい価値を生む――その事実が、何よりの自信につながりました。これからも失敗を恐れず、遊び心・挑戦する心を忘れず、“限界突破”へのチャレンジを続けていきたいと思います。
この経験から得た学び、喜びをぜひ皆さんと共有したいと思います。
2025年11月掲載