化学分析(RoHS・REACH・環境)

樹脂組成解析

赤外分光分析(FT-IR分析)とは、分子の構造を解析する分析法の1つです。分子はそれぞれ固有の振動をしており、その分子に波長を連続的に変化させた赤外線(IR)を照射すると、分子の固有振動と同じ周波数のIRが吸収され分子の構造に応じたスペクトル情報が得られます。その特徴を活かして固体、粉体、液体、気体など様々な形状の試料の測定が可能で、OKIエンジニアリングでは、製品に付着した異物の主体成分、樹脂の使用前後における分子構造変化の解析、有機化合物の定性など各種有機物の解析が可能です。

樹脂組成解析

  • 不具合品もしくは故障の起因とされる異物の解析
  • 主材料成分の解析・評価、および添加剤、複合成分の解析が可能
  • 積層構造物の分析および成分の分布の把握が可能
  • JIS D 0205(1976)自動車部品の耐候性試験方法基づいた試験後の実際の劣化具合の評価

樹脂組成解析事例

樹脂の定性分析

樹脂はその種類を知ることにより、機械的特性や耐薬品性などを把握することができ、サイレントチェンジの確認やソルベントクラックの原因調査に適用されます。FT-IRでは、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系など樹脂の系統を知ることができます。エポキシ系樹脂にも種類があり、ビスフェノールA系エポキシなのかビスフェノールF系エポキシなのかなど、より詳細に樹脂の種類を知りたい場合は、熱分解GC-MSで定性分析を行います。

サイレントチェンジとは
製造委託先で委託当初に指定した樹脂材料とは異なる樹脂材料を許可・連絡なく使用されることをいう。何らかの不具合が発生し顕在化するが、それまでは気づかないことが多い。
ソルベントクラックとは
樹脂に有機溶媒を塗布したときに樹脂表面にクラックが発生する現象。特に非晶性樹脂に多い。発生は樹脂の種類と有機溶媒の組み合わせによる。原因は成型時、加工時に加えられた応力が、緩和されないまま製品化され、そこに有機溶媒を塗布すると樹脂表面が弱くなり、内部に残留した応力にこらえきれず、クラックが発生する。

ゴムの定性分析

ゴム製品については、主体成分が不明なものについては主体成分の把握も重要ですが、ゴム製品の性能、性質に大きな影響を与える充填材、潤滑油などの添加材の把握も重要になります。当社では通常のFT-IR分析では把握しにくい主体成分に複合されている成分も解析ソフトを使用して推測が可能です。

ゴムの定性分析事例

ゴムの定性分析事例
ゴムの定性分析事例

塗装材料の解析

塗装材は、塗装時に重ね塗りを行った場合に複数層になっています。表面のFT-IRを行うだけでは、すべての層の測定結果が交じり合う結果となってしまいます。そこで、OKIエンジニアリングでは、塗装材の断面をマッピング分析をする事により積層部分の解析まで可能としました。下記の塗装片透過マッピング分析をした結果、表面のFT-IRでは主体成分のみ結果しか得られませんでしたが、断面構造をマッピングすることにより4層構造になっている事が分かります。マッピング分析をする事によって、積層構造物の解析、見た目では分からない化学成分の存在の把握、汚れの拡散状態、多成分の重なりや範囲の把握が可能です。

塗装材料の解析事例

塗装材料の解析事例

プラスチック製品の変色原因解析

プラスチック製品の変色原因には、外部由来の付着物や、樹脂の構造変化などが考えられます。下記は、新品と使用品を比較し主体成分を分析した結果です。スペクトルの各ピークはほど同じで主体成分が同一であると判定されます。一見、同一の成分のみにみえますが、拡大すると1720cm-1のC=O吸収と1640cm-1のC=C吸収に違いのピーク強度に違いがみられます。これは、材料が酸化劣化した事による構造の変化を表したものです。このことにより、変色の原因は付着物ではなく酸化劣化判断できます。このようにOKIエンジニアリングでは、樹脂の構造的な変化による変色かどうかの判定が可能です。

プラスチック製品の変色原因解析事例

樹脂成型品の損傷・破損解析

市場で使われた製品の損傷、破損は、様々な原因が考えられ、断続的な応力がかかったことによる疲労破壊、使用環境下での熱や光による酸化劣化、加水分解、薬液付着による環境応力割れ(ソルベントクラック)などが挙げられます。OKIエンジニアリングでは、これらの原因について破壊メカニズム解明の解析をいたします。

観察 光学観察
SEM観察
破壊起点、破面状況の確認
物理的解析 FT-IR
DSC
分子量の低下、結晶化度の確認
化学的解析 FT-IR
EPMA
酸化劣化、加水分解等の確認、付着物の特定
耐久性調査 耐熱性
耐候性
耐薬品性試験
製品の劣化検証、安全性の確認

オゾンによるゴムの劣化解析

オゾンによるゴムの劣化は、オゾンに含まれるラジカルな酸素がゴムの架橋部分に結合し、ゴムを脆化させます。この劣化は経年に関わらず短時間の暴露でも現れるため,ゴムを使用した製品などの殺菌やウイルス不活化を目的としてオゾン暴露を行うと、ゴム部分の早期劣化が懸念されます。
OKIエンジニアリングでは、人工的に発生させたオゾンを含む空気中に試験品を暴露し、耐オゾン性を促進試験する『オゾンによる劣化試験』など、実際に使用される現場を想定したオゾン試験が可能です。オゾンによる劣化試験後は、主に実体顕微鏡、デジタルマイクロスコープで試験対象試料の表面観察を行いますが、走査型電子顕微鏡によりクラックやひび割れの状態について拡大観察も可能です。また、赤外分光装置による主体成分分解析に加え添加物や複合成分の解析、積層構造物解析、微量付着物同定、化学的構造の変化による定量的な測定もいたします。

オゾンによるゴムの劣化解析事例

オゾンによるゴムの劣化観察事例
オゾンによるゴムの劣化観察事例

塩酸暴露試験

OKIエンジニアリングでは、製品の信頼性評価試験の一つとして、塩酸(塩化水素)の環境での樹脂材料製品、塗装の劣化、絶縁不良といった影響を評価する試験・解析が可能です。塩酸溶液を使用して、試験槽内の塩化水素濃度を一定の濃度に調整します。1ppm~200ppmまでの濃度調節が可能です。試験後の劣化解析や、物理的な性能などの材料評価も合わせて対応可能です。

接着剤の付着状況解析

接着剤の付着量、付着状況の分布、また剥がした後に残存している物質量や付着状況の分布の解析を行うことで製品に接着剤を使用した際の状況把握が可能です。接着剤の定性分析は付着状況の分布状況や一定面積当たりの付着率まで可能で、製品の加工状態を確認できます。また使用後であれば、現在の構成物質の変化を含めた評価が可能です。

接着剤の付着状況解析事例

接着剤の定性確認例
接着剤の定性確認例

アクリレート接着剤の硬化反応

化学的な構造が分単位で変化する場合にも測定可能です。下記のスペクトルは、一般的に瞬間接着剤として販売されているシアノアクリレート接着剤について、硬化開始1分後から0.5分経過毎に取得したデータです。スペクトル全体では、同一成分のみのようにみえますが、拡大すると1620cm-1のC=C吸収が時間経過に伴って減少していることが分かります。これは、C=Cの結合部分が乖離していくためです。このように、アクリレート接着剤の硬化反応の進行を確認できます。

アクリレートの硬化について時間経過における変化事例
アクリレート接着剤の硬化の時間経過における変化

樹脂材料・製品の耐候性加速試験

簡易耐候性試験
簡易耐候性試験

車のヘッドライトに使われているポリカーボネートや、テールランプのアクリル樹脂などの樹脂製品は、紫外線や熱などにより劣化が起こります。樹脂製品の劣化の程度は屋外環境に依存するため、製品の設計段階で耐用年数を考慮した材料の選定が必要です。また屋外環境だけでなく、殺菌やウイルス不活化を目的とした紫外線照射でも樹脂材料の劣化が懸念されます。
OKIエンジニアリングでは、簡易耐候性試験システム(紫外線照射装置を熱分解ガスクロマトグラフ質量分析装置(Py/TD-GC/MS)に接続した耐候性試験機)で、1mg程度の樹脂試料に紫外線照射と同時に揮発性生成物の発生ガス分析法(EGA-MS)による化学的定量分析が可能です。試験前後での化学的構造の定量評価により、紫外線による劣化度合いが簡易的に評価できます。

樹脂評価手法

樹脂評価手法
目的 方法
形状・形態 構造観察 OMSEMTEMX線CT(透過X線)
表面粗さ プローブ顕微鏡(AFM)、レーザー顕微鏡
元素分析 組成、添加剤、金属複合物 蛍光X線分析ICP-OES
不純物 SIMS、ICP-MS(AAS)
イオンクロマトグラフィ
熱分解GC-MS分析
化学構造 結合状態 FT-IR、ラマン分光、TOF-SIMS、XPS
有機物 樹脂の主体成分分析 FT-IR
異物の解析 FT-IR、TOF-SIMS
分子構造の変化による劣化 FT-IRPy/TD-GC/MS
分子量、重合度の解析 FT-R、GPC
物性 機械的強度 引張試験、曲げ試験、硬度
熱分析 軟化点 TMA
伸縮・収縮 TMA
酸化・酸化分解 DSCTGA
熱分解 DSCTGA
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樹脂組成解析に関するお問い合わせ先
WEBからのお問い合わせ:お問い合わせフォームはこちら
電話:03-5920-2356

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